平和構想学習会のレジュメ集です |
平和構想学習会 第3回 2018年1月29日
於:くらし支える相談センター
テキスト 渡辺治・福祉国家構想研究会編 シリーズ新福祉国家構想D
『日米安保と戦争法に代わる選択肢 憲法を実現する平和の構想』(大月書店、2016年)
第3章 安倍政権はなぜ明文改憲に固執するのか(三宅裕一郎)
1 一九九〇年代以降の明文改憲のねらいと特徴
(1)一九九〇年代の解釈改憲の時代
1990年代以降の改憲動向の特徴
自衛隊の海外展開を可能とする「普通の国」づくりを志向←アメリカと財界の圧力
自衛隊の海外派兵・集団的自衛権の行使・他国の武力行使と一体化した活動を禁じてきた憲法9条をめぐる政府解釈の膨大な「体系」を改編しなければならなくなった
この改憲路線のきっかけ
1991年の湾岸戦争:「一国平和主義批判」、カネだけでなくヒトも
→解釈改憲の手法で
1999年、周辺事態法:我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に、自衛隊の米軍への「後方支援」を可能とする
しかし依然として9条からの制約 @自衛隊は武力行使をしてはならない
A後方支援:武力行使と一体化しないよう、戦闘が行われない「後方地域」に限定
(2)二〇〇四年以降の明文改憲論の高揚
小泉内閣 自衛隊海外展開の時限立法
2001年 テロ対策特措法 2003年 イラク特措法
→周辺事態法と同様の制約
歴代の憲法解釈を維持しながら、法律で部分的に自衛隊の海外展開
解釈改憲の限界を自民党は痛感:明文改憲に向けたモチベーション
2000年代に入って多くの改憲案 明文改憲論がしのぎを削り合う状況
経済同友会:03年4月 読売新聞:04年5月 日本経団連:05年1月
自民党:04年6月「論点整理」、04年11月「憲法改正草案大綱(たたき台)」
民主党:04年6月「創憲に向けて、憲法提言『中間報告』」
2 二〇〇五年自民党「新憲法草案」を頂点とする明文改憲動向とその後の衰退
(1)党内のジグザグをへた「新憲法草案」の発表
2004年12月7日 自民党 「憲法改正草案大綱(たたき台)」を撤回
←参議院自民党の反発、陸自幹部に草案作成依頼が判明
同月8日 新憲法制定推進本部(小泉首相が本部長)立ち上げ、新憲法起草委員会設置
2005年11月22日 結党50周年記念して「新憲法草案」発表 明文化した初の改憲案
同10月31日 民主党 「憲法提言」発表
自民党案の9条
9条2項を全面削除し、「9条の2」という条文を設けて「自衛軍」の保持を明記
自衛軍の任務=「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保する」だけでなく「法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動」(9条の2 第3項)も含まれる(下線は刑部)
含意
自衛隊の海外活動の限界を明文改憲で突破したい
集団的自衛権の明記には公明党や民主党の反発が予想される
集団安全保障活動への全面的参加を確保したい
上の下線部の「活動」の文言とすることで、
自衛隊が柔軟に「米軍の依頼によって有志連合などにも行けるし、国連の決議があればもちろん行く」
その他、自民党案では軍事裁判所の設置を明記
(2)集団的自衛権行使容認をめざす第一次安保法制懇の始動
2006年9月 第1次安倍政権成立
(3)自民党の政権からの転落と明文改憲論の衰退
2007年7月 参院選、自民党惨敗、安倍辞任
2008年6月 安保法制懇報告書提出 福田首相、事実上お蔵入り
2009年8月 民主党政権誕生 明文改憲の鎮静化
2012年4月28日 自民党(野党)「日本国憲法改正草案」発表
3 「日本国憲法改正草案」の国家構想とその批判的検討
(1)政治的文脈における「日本国憲法改正草案」の位相
2012年自民党改憲案は「本音」がストレートに出たもの
実現可能性より改憲政党としての存在感 ←野党時代に民主党との違いを強調
改憲の推進にはネックになり、前面には出されていない
しかし自民党の改憲ビジョンの到達点を示すので検討する意義はある
(2)二〇一二年自民党改憲案をつらぬく立憲主義のベクトルの主客転倒
自民党案102条1項
「すべて国民は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」
→国民と国家の関係、立憲主義のベクトルが逆
国民の自由から出発するのでなく、国家が先に存在しているという発想
立憲主義
専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという考え方(144ページ)
「個人の尊重」を出発点として、その状態を十全に実現すべく国家に対し利益調整役としての権力をゆだね、しかしその行使にあたっては憲法を尊重する義務を負わせるという制度的工夫(145ページ)
(3)二〇一二年自民党改憲案の批判的検討
国防軍の創設による憲法九条の抜本的改訂
9条1項 武力による威嚇または武力の行使について「永久にこれを放棄する」から「用いない」に
9条2項 全面的に書き改め、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」
「9条の2」を新設 国防軍の創設を明記
→「軍」は自衛隊とはまったく異なる
歴代政府:9条との緊張関係から、「戦力」ではない「必要最小限度の実力」としてきた
→集団的自衛権や軍法会議を手放す
「軍」となれば、それらを保持し、基本的人権も制限
「軍事秘密」の保護:知る権利を侵す
「公益及び公の秩序」を理由に表現の自由、活動や結社への制限
「災害便乗型」緊急事態条項の創設
東日本大震災(2011.3.11)に便乗して日の目を見る
緊急事態の性質や範囲はあまりに非限定的
内閣総理大臣のイニシアティブの強化、内閣の政令による立法権の簒奪
憲法改正要件の緩和化
改憲発議:「3分の2以上」を「過半数」に
日本国憲法の改正要件は諸外国に比べて特別に厳しいわけではない
諸外国では「3分の2以上」をクリアして何度も改憲されている
→日本で改憲されないのは「3分の2以上」のせいではない
4 現在の安倍政権の明文改憲戦略のねらい
(1)第二次安倍政権以降の解釈改憲と明文改憲の試み
2012年12月 総選挙 自民党圧勝 第二次安倍政権発足 安保法制懇を再始動
憲法96条(改憲要件)改正先行論→各方面からの批判でトーンダウン
2013年12月4日 日本版NSC(国家安全保障会議)設置
同12月6日 特定秘密保護法可決:14年12月10日施行
同12月17日 国家安全保障戦略の策定
2014年4月1日 防衛装備移転3原則の発表:武器輸出3原則の放棄
(2)二〇一四年七月一日の閣議決定から二〇一五年の安保法制
2014年7月1日 集団的自衛権を含む、自衛隊の幅広い軍事力行使容認の閣議決定
「後方支援」のエリア拡大 「駆け付け警護」「任務遂行のための武器使用」解禁
外国での邦人救出などを可能とする「切れ目のない安全保障法制の整備」を推進
2015年5月15日 戦争法(国際平和支援法、平和安全法制整備法)国会提出
同9月19日 戦争法成立→解釈改憲路線は一つの到達点に
(3)安保法制後の明文改憲論の現段階――緊急事態条項の創設が意味すること
安倍は戦争法の審議を通じて、憲法の壁を痛感
戦争のできる国づくりには、戦争を想定していない憲法の体系を丸々変えるしかない
突破口として、緊急事態条項の創設
国民的反発が少なく、他党の協力が得やすいからだけではない
戦時における民間企業や国民の協力を憲法上の義務に格上げする必要性
9条改憲に道を開く
補論 日本の平和のためには憲法改正が必要なのか?――新九条論批判(渡辺治)
1 戦争法廃止へ向けての共同と憲法問題――新九条論派の台頭
新9条論の登場:戦争法反対派の一部からの新たな護憲的改憲論
今井一、伊勢崎健治、小林節など
戦争法が強行され、安倍政権が解釈や立法で憲法を破壊してしまったから、
そのような解釈の余地がないように9条を改正しなければならない
自衛隊を憲法上容認し、個別的自衛権に限定する
(意図)憲法の平和主義を維持し戦後70年続いてきた平和国家日本を維持するためにも、9条を改正し、正々堂々、解釈の余地ないかたちで自衛隊を認めることが必要
改憲派と護憲派の間の「第三の選択肢」として提起 しかし改憲派より護憲派を批判
護憲派が9条と自衛隊の関係をあいまいにし、
憲法と現実との乖離を放置してきたことが解釈改憲の横行を許し、
9条の悲惨な現状を生んでいる
2 新九条論の主張
憲法は死んだ、9条と現実との乖離
9条の下で自衛隊が存在し続けてきたことを事実上容認してきた護憲派の欺瞞性が安保法の違憲性を無視する言い訳に使われた
護憲派が憲法の条文の護持ばかりに専念し、自衛隊の肥大化に目をつぶってきたからこんな乖離が起きた
こうした解釈改憲による立憲主義破壊の回復のためには、9条をきちんと改正して自衛隊を軍隊として認め、そのうえで、その活動を解釈の余地のないかたちで縛る必要がある
→立憲主義を立て直すのが先決という危機感
専守防衛の自衛隊、個別的自衛権のみ
9条1項を改正して侵略戦争だけを禁止し、2項で個別的自衛権のみを認める
専守防衛の自衛隊を認める 防衛裁判所・軍法会議も認める
集団安全保障
集団的自衛権は認めない 集団安全保障のための自衛隊派兵も認めない
→しかしそれで今より自衛隊の活動に規制が厳しくなるのではない
政府は戦争法制定後でさえ、集団安全保障への武力行使による参加は認めていない
米軍基地
米軍基地については各論者様々
「外国軍事基地の禁止」から「中国脅威論・抑止力の立場から米軍への規制なし」まで
新9条改憲の担い手
護憲派の中で新9条派が増えることを期待
3 新九条論の致命的欠陥――改憲論の露払い
前提の誤り
新9条論の最大の誤り 「解釈改憲で9条は死んだ」という捉え方
しかし9条の規範が生きているからこそ、
国会の憲法審査会における憲法学者の戦争法違憲発言が反対運動を高揚させた
9条が死んでいたら違憲発言によって多くの市民が立ち上がることはない
戦争法によって大きく改変されてもまだ9条の規範は生きている
戦争法が発動されても、諸外国のようには海外での武力行使はできない
さらには、戦争法を廃止すれば、9条の規範力は復原し
自衛隊の海外での「後方支援」も「存立危機事態」での米軍加担もできなくなる
だからこそ安倍は明文改憲を目指す
→新9条論は「9条は死んだ」としてそれに乗るものだ
立憲主義の形式的貧弱な理解
新9条論の立憲主義は、憲法と現実を一致させろ、という形式主義的な意義に留まる
→現実と乖離してしまった9条をより現実に合わせて改変し、
違憲な現実に規範を近づけることで、改変された憲法にそった政治の実現を図る
安倍(や稲田)と同じ
立憲主義の回復とは、憲法を現実に合わせて改変することではないし、
96条の改正手続きに従えばよいというものでもない
違憲な現実を変えて、現実を憲法に近づけること
この「憲法」は実定憲法とも近代憲法の基本原理とも理解しうる
どちらの理解でも、9条の平和主義は96条によっても改変が許されない
個別的自衛権を認める新9条論は、憲法9条の根本的否定 → 9条理解に最重要!!
9条の根幹:第2項の戦力不保持規定 戦後日本を特異な国にした要因
1950年代当初から、戦争法制定後の今日まで一貫した政府解釈
日本国憲法の下では「戦力」=軍隊は持てないという、9条2項の核心は維持
憲法下では自衛のためでも持てるのは「戦力」ではなく「必要最小限の実力」だけ
実際の自衛隊はアメリカの極東戦略を補完する「戦力」だが、
自衛隊は「戦力」ではないという解釈によって活動を強く規制されてきた
→海外派兵・集団的自衛権行使が許されない
新9条論者たちは、自衛隊は個別的自衛権だけしか行使できないということで、
厳格な統制をかけたつもりだが誤り
1.現行9条に対する政府解釈は個別的自衛権にも制約をかけている
侵略に反撃するときでも他国領土に攻め込むことはできない
大量破壊兵器は持てない
改憲で自衛のための軍隊の保持を公認すればこれができる
2.「戦力」は持てないという制約と異なり、
「個別的自衛権」行使のための軍隊が持てるとなれば、
軍隊の存在や軍事行動を前提にした諸制度――軍法・軍法会議・軍事秘密保護法――
が解禁される
史上、ほとんどすべての戦争は「自衛」を名目に行われた
戦争法で、米軍加担の規定が入った→集団的自衛権を個別的自衛権として正当化
3.改憲による軍隊保持の明記は戦後日本の非軍事の文化の変質・破壊をもたらす
新9条論はヤドカリの殻
軍備の全面禁止という小さな殻(9条)の中で成長したヤドカリ(自衛隊)は
海外出動も果たした
少し大きな殻(新9条)に変えても
ヤドカリは成長を止めず新しい殻を破るに違いない
戦争法、辺野古新基地建設、アメリカの戦争への加担を阻止しえない
新9条論の目的は、これ以上の自衛隊の拡大・アメリカの戦争への加担を阻止することだが、それは改憲を必要としない
上記の目的達成には、まず戦争法を廃止し、政府解釈を復元する
さらに、自衛隊のなし崩しの海外派兵を元に戻して厳格に規制するためには、
周辺事態法・有事法制など一連の米軍の攻撃を補完する自衛隊の出動を根拠づけている法律を改廃する
辺野古新基地建設中止にはアメリカとの協議が必要
→いずれにせよ、選挙で勝利して政府を作って国民の理解を得ることが必要
簡単ではないが憲法を変える必要はない
これに対して新9条を作るのははるかに難しい
しかも新9条ができても今より厳しい統制はできない
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以上のようにみてくると、新九条論はその提唱者たちの善意の目的を達成することはできない。もし、その狙いを実現したければ、むしろ、現行憲法の擁護と戦争法廃止によらなければならないことは明らかである。
現行憲法九条は、戦後日本を他国とは異なる道を歩ませるうえで大きな役割を果たしてきただけでなく、アジアと日本の平和を実現するうえで今後も大きな武器となるのである。
180ページ
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**メモ(刑部)**
「自衛隊は軍隊か?」の見方 →分かりやすい比喩 ハードとソフト
装備(ハード)は世界有数の軍隊だが、政治環境が原因となって、それを動かす法的根拠(ソフト)には規制がかけられているので「軍隊」になりきっていない
「こんなに機能があるのに使えない」パソコンのごとく
「使い方を知らないのか!」という挑発には決して乗らず、「せっかくの機能だから使いたい」という衝動を抑えて、「余計な機能は使わない方針。これまでの機能だけで十分」と決然と断言するのが肝心
悪質な機能を備えたパソコンは廃棄するのが根本的解決だが、それができない間は上記の心構えで臨む
この見方に立つことで
軍備の現状・軍拡の実態を正確に認識して、自衛隊への幻想・美化を批判しつつ、
「自衛隊は実質的に軍隊なのだから9条は無意味・偽善」というニヒリズムを克服する
→依然として現実に9条が持つ規範力を活かしながら、その理想の実現に向かう
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**補遺** 安倍改憲提言(2017年5月3日)について
安倍提言の性格:安倍自身による改憲の切り札、戦後日本の進路をめぐる正念場が来た
<1>提言の4つの特徴
(1)2020年という改憲目標年の設定
1.改憲に対する関心の醸成
9条支持・擁護の意識、改憲への消極的意識を、中国・北朝鮮「脅威」をテコに変えないと改憲は難しい→改憲をもっと話題にしたいための期限設定
2.安倍任期中に決着したい
(2)本命が9条にあることを明言
保守の悲願 歴史的経過 …略…
・アメリカの圧力 ・アジアの大国として復活という安倍の野望
解釈改憲から明文改憲へ
2014.7 集団的自衛権行使容認の閣議決定 2015.9 戦争法強行
根本的解釈改憲をしたが、まだ9条は生きていた→明文改憲の衝動
(3)加憲方式による9条改憲
(4)教育無償化などとセット
両者は公明党・維新の会のとりこみ
立ちはだかる総がかりの共同を強行突破して安倍改憲を実現する
自民党案(2012年)は土台にならない
野党共闘の分断を俟たずに、自・公・維で
cf 総がかりの共同の三つの特徴 過去の経験と異なる
1.地域で共同が拡大
2.戦争法強行採決後も持続、戦争法廃止の共同へ発展→政権奪取が課題になりうる
3.戦後初の野党共闘を生む
<2>9条加憲論の危険性
(1)9条の「武力によらない平和」という規範の根本的転換
自衛隊を認めれば「武力による平和」を打ち出すことになるので、
9条の発信力・規範力は大幅に弱まる
(2)「国民の9割に支持される自衛隊」はなくなる
**自衛隊を容認することと、自衛隊保持を憲法に書き込むことはまったく別**
自衛隊の実態は措くとして、
国民が支持しているのは、災害復旧支援し、海外に行っても武力行使しない自衛隊
これは9条の禁止する「戦力」でないと国民に納得してもらうために、
政府が自衛隊の活動を制約した結果つくられた
自衛隊合憲が明文化されればこの制約はなくなる
災害復旧に精を出す必要はない→自衛隊の性格が変わる
(3)自衛隊という軍事組織が合憲とされる効果
軍法・軍法会議の設置に動く
「軍部」という言葉の復活 戦前日本と現代アメリカにはあるが現代日本にはない
(4)戦争法で海外での武力行使を大幅解禁された自衛隊が合憲に
(5)9条3項に修飾がつけばさらに2項を空文化
たとえば「国際社会の平和と安全を維持するための活動に参加する」
→多国籍軍への参加が認められる
<3>いま何をなすべきか
(1)平和を破壊する実質的憲法改悪の策動、辺野古基地建設阻止、戦争法発動阻止にがんばる
第一の課題は辺野古・高江 沖縄では憲法がない状態が続いている
憲法実現のためにも反対運動強化 基地建設を阻止するためにも安倍改憲阻止・政権打倒
(2)戦争法廃止の共同を上回る、かつてないほど広い、安倍9条改憲に反対する共同を
戦争法反対・廃止の運動はまだ安倍政権打倒・戦争法廃止ができていない
より大きな安倍改憲阻止の共同を全国で地域でつくらねばならない
(3)安倍改憲のねらいと危険性の学習と市民への働きかけを草の根から
学習と署名運動
(4)いま必要なのは改憲ではなく憲法を実現することを確信にする
安倍改憲反対だけでなく、「米日政府の政策の危険性」と「憲法に基づくアジアの平和構築」
を訴える
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世論調査でも明らかなように、国民は自衛隊が海外で武力行使をする道を望んでいません。それでも北朝鮮のミサイルや中国の軍事大国化を恐いと思っているから、仕方なく安倍政権を容認しています。安倍改憲の危険なねらいの暴露と同時に、日本とアジアの平和には憲法に基づく平和と安全の道しかないことを、私たち自身が学び確信にしていくことが求められています。 38ページ
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以上、渡辺☆1より
<4>武力行使関係(特に集団的自衛権と海外派兵)から見た政府の憲法解釈と自衛隊加憲論
(1)2013−15年の憲法解釈変更前の解釈
現在の政府の平和主義解釈の枠組み:自衛力論
自衛のための必要最小限度の実力であれば、持つことも行使することも違憲ではない
→自衛力に合わせて戦力・交戦権の内容を削る
・9条2項で禁止された戦力:自衛力を超えた実力
・否認された交戦権:自衛力に必要な権利を超えたもの
自衛力論の対抗する二つの基礎→限定された実力=自衛力のみが認められる
「9条はすべての武力を禁止しているように見える」こと VS
「国家固有の自衛権、国民の平和的生存権や幸福追求権が認められる」こと
「自衛のため」は個別的自衛権だとされてきた
個別的自衛権のための武力行使は「必要最小限」でなければならないので
海外派兵は禁止
海外派兵禁止の緩和
武力行使目的を持たなければ海外派遣として認められる
日本を守るためには、公海・公空でも例外的に武力行使が認められる
他国の領域での武力行使は一般に禁止だが、例外的に敵基地=策源地攻撃が認められる
敵基地攻撃は理論上可能だが、政策的にミサイルは持たないとしてきた
→法的論理と政治的要素が絡み合って、容認の論理や基準は不明確
海外派兵の禁止は原則で、海外での武力行使は例外だ、という法的論理はなお存続
政治的力関係や世論などの要素も関わる
(2)2013−15年の憲法解釈変更でどうなったか
@集団的自衛権
個別的自衛権から「自国防衛」へ
「他国防衛」は違憲だが、「自国防衛」のためなら集団的自衛権も合憲
解釈変更前は自衛とは個別的自衛権だったが、変更後は「自国防衛」となる
→自衛隊法・防衛白書など同じ文章でも意味が読み替えられる
「基本的な論理」と「当てはめ」という組立 前者が同じでも後者で変質
A海外派兵
禁止原則は法的には存在しているが、その具体的あり方には政治的要素が関わっている
B明文改憲へ
日米権力の最終目標:アメリカが行う戦争の前線の戦闘に自衛隊を参加させること
解釈改憲で集団的自衛権の容認が限定的だったので、全面解禁へ明文改憲が目指される
(3)自衛隊加憲でどうなるか
@問題の出し方に問題
任務無関係論:任務と無関係に「自衛隊の存在」が合憲か違憲かと問う
それは災害救助を含めて何らかの意味で自衛隊に賛成すると、自衛隊合憲論を導く効果を生み出している
A自衛力論+αを考える
2013−15年解釈変更後、自衛力論は自国防衛を意味する
この自衛力論によって、自国の存立に必要な個別的自衛権・集団的自衛権・集団安全保障の任務が与えられ、これを憲法に加えた上で+αを考える
1・2項も加憲部分も自国防衛で統一的に解釈される
戦力:自国防衛を超えた実力 交戦権:自国防衛に必要な権利を超えたもの
B憲法・現実・立憲主義
憲法と現実の不一致 憲法を現実に合わせて、立憲主義の回復か?
e.g. 憲法とかけ離れた刑事実務の現実
憲法18・31−40条を削除して現実に合わせるのか?
9条は平和のために積極的で大きな役割を果たしてきた
C加憲による変更可能性
現行:憲法9条は自衛隊法の上位にある
加憲後:9条1・2項と加憲部分が並列→1・2項の力が相対的に小さくなる
自衛力論の変化
現行:「9条の文面」と「固有の自衛権など」の対抗の上に立つ
加憲後:前者が弱まることで、後者が強まり、自衛力論の武力制約的側面が弱まる
加憲によって、自衛隊・武力行使は憲法によって消極的に禁止されていないというだけでなく、積極的に憲法上の根拠を持つことになる→(注)
自衛隊・武力行使に課せられてきた制約が相当に緩む
**論文では、加憲による武力行使拡大の可能性や、なお残った9条1・2項を基にした憲法論争の展開などが、法解釈・現実的政治闘争などの予想を含めて叙述され、最後に、加憲論は9条2項削除へのワン・ステップと見る、という見解が出される
以上、浦田☆2より
(注)加憲の意義としての<軍事についての「制限規範」から「授権規範」へ>
自衛隊の存在を憲法に「明記するだけ」の重大な意味
軍事に関する「制限規範」としての9条を、「授権規範」という別物に変え、
歯止めをなくしてしまう
立憲フォーラム☆3(14・15・16ページ)、小沢☆8(27−30ページ)
<5>「後法は前法に優る」をめぐって
法律学の「黄金律」 これがなければ法の定位という国家作用は大混乱に陥る
9条3項加憲が行われれば、矛盾する1・2項は法的意味を失う
日本の立法では、新たな法律や条文と抵触する法条を削除することを通例とする
アメリカの加憲方式
e.g. 「禁酒法」の根拠規定は法典に存在しているが、後の法で廃止され無効である
→「改憲ならざる加憲」はデマなので「加憲は改憲の一形態」と言い続ける必要がある
小沢☆5(34−36ページ)
加憲後に、法文の矛盾の解釈の問題が生じることは否定しない
しかし「いま私たちが論じている問題」は加憲後の解釈問題ではなく、いま画策されている加憲が立法行為として何を意味しているのか、改憲推進勢力が何を意図し、どういう効果を見込んでいるのか、ということ
改憲派がその提案を「小さく見せる」議論と厳しく対峙する必要がある
小沢☆8(29・30ページ)
参考文献
☆1 渡辺治「安倍終章の改憲発言――そのねらいと危険性――」
『安倍9条改憲は戦争への道』(九条の会ブックレット、2017年8月15日)所収
☆2 浦田一郎「安倍首相改憲発言の憲法論的検討――政府の憲法解釈と自衛隊加憲論を
中心に考える」(同前所収)
☆3 立憲フォーラム編『[解説]安倍改憲は許さん!』(2017年11月)
☆4 憲法会議『憲法9条を変えて、「戦争する自衛隊」にしていいのですか』
(第2版第2刷、2017年11月3日)
☆5 小沢隆一「本格化する『安倍改憲』の動きと理論的対決点」
(『前衛』2017年8月号所収)
…「加憲」の見方、「後法は前法に優る」の意味
☆6 中祖寅一「安倍改憲 自衛隊明記の危険 改憲発議を許さない」
(『前衛』2017年9月号所収)
☆7 渡辺治「安倍政治に代わる選択肢を――安倍改憲を阻む共同から野党連合政権めざす共同へ」 (『前衛』2017年10月号所収)
…安倍改憲阻止と安倍政権を代えるという二大課題の提示
戦争法廃止など政策実現の困難性とその克服についての問題提起
☆8 小沢隆一「九条加憲で何がどう変わるのか――『安倍九条改憲』阻止のために
今論ずべきこと」 (『前衛』2017年11月号所収)
2017年日誌
5月3日 安倍改憲提案 読売新聞インタビュー、日本会議系集会ビデオメッセージ
7月2日 東京都議会選挙 自民党歴史的大敗 小池都民ファースト大勝
9月4日 「全国市民アクション」記者会見 3000万署名を提起
9月25日 希望の党結党
9月28日 衆議院解散
民進党前原代表、希望の党への合流表明、両院議員総会で決定
10月22日 総選挙投票
※情勢の進展に伴い、各論考の発表時期によって、改憲スケジュールや政党状況などの内容に違いがある
**メモ(刑部)**
9条の理想主義から生じる現実的機能 9条の「非戦」のリアルを語る重要性
1.軍事抑制
敗戦による武装解除で9条制定当時はまさに「リアル」だった
再軍備により9条は「タテマエ」「ハッタリ」に転落したが、
理想主義に裏付けられた求心力を持つが故に、
それは微温的な言葉ではなく「ハッタリ」的断言であることによって、
現実を叱り牽制する力を強く持った
2.平和創造
e.g. ○JVC(日本国際ボランティアセンター)谷山博史(「赤旗」2018.1.24)
日本のNGOだけが「非戦」 欧米は違う
アフガニスタン人に交渉・対話による問題解決を教える
○アフガン復興を支える NGO「ペシャワール会」現地代表・中村哲
(「朝日」2016.1.30)
灌漑事業・農業復興で戦争の原因をなくす
平和国家・日本のブランド力と自衛隊派兵によるその揺らぎ