平和構想学習会のレジュメ集です |
平和構想学習会 第6回 2018年6月18日
於:くらし支える相談センター
テキスト 渡辺治・福祉国家構想研究会編 シリーズ新福祉国家構想D
『日米安保と戦争法に代わる選択肢 憲法を実現する平和の構想』(大月書店、2016年)
**冒頭コメント
テキストは2016年刊行。その後、2017年核兵器禁止条約の採択、17・18年、北朝鮮をめぐる核・ミサイル問題での劇的展開があった。北朝鮮問題の変化は「武力によらない平和」の観点の正当性を安全保障のみならず経済領域でも実感させるものであり(高価な最先端の武器を買って「抑止力」を高めることのバカバカしさが際立ってきた)、核禁条約の採択は日本と東北アジアにおける将来展望にも有利さをもたらしている。
第7章 安保と戦争法に代わる日本の選択肢 安保条約、自衛隊、憲法の今後をめぐる対話 (渡辺治)
1 安保法案反対運動からみえてきたもの
戦争法が提起した日本の安全保障をめぐる二つの道
1.与党:日米同盟の深化、米軍のグローバルな戦争・介入に加担、
日米共同作戦体制の具体化
→中国・北朝鮮への抑止力強化で安全保障確保
2.上記の方向は、アジアの平和、日本の安全を確保しない
海外での武力行使、アメリカへの加担をしない→アジアの平和への発言力強化
戦争法反対の二潮流
1.安保廃棄派 自衛隊の縮小・解散 「武力によらない平和」 9条理念による平和実現
戦争法の二面性評価:1.安保体制の本質の徹底
2.自衛隊への制約を外し海外派兵へ転換
2.「リベラル」派 安保条約・自衛隊を容認 ただし9条の従来の政府解釈の枠内
集団的自衛権行使・アメリカの戦争への加担(後方支援拡大)には反対
戦争法は安保体制からの転換・逸脱と捉える
戦後の平和運動、90年代以降の海外派兵反対の運動は安保廃棄派が担った
戦争法反対運動では、「リベラル」派も合流して大きい流れになった
憲法改悪反対運動における二つの潮流
90年代以降、自衛隊の合・違憲ではなく、海外派兵の是非が争点に
社会党が村山政権以降、安保・自衛隊合憲論に
九条の会は両潮流の合流 自衛隊の存在については措いて、改憲反対の一点で
辺野古基地反対運動をめぐる二つの潮流
1.基地反対派 :米軍撤退、安保条約廃棄
2.沖縄差別反対派:安保・米軍基地賛成、沖縄への集中は許せない
⇒二潮流が合流して「オール沖縄」
日本とアジアの平和構築をめぐる二つの潮流の違い
戦争法廃止・辺野古基地阻止の先の展望は二つの潮流で大きな違いがある
「リベラル」派内でも論者によってかなり違う
e.g. 専守防衛の中身、いつの時点の安保条約の運営に戻るのか
本章の課題
戦争法をめぐる世論
:海外での戦争には反対だが、中国・北朝鮮の脅威に対する米軍・自衛隊の行動には賛成
→戦争法や安倍政権への支持が増加する傾向
→戦争法と日米同盟強化に代わる選択肢を示すことは、戦争法廃止運動にも必要
「リベラル」派構想との対話を通して安保廃棄派の平和構想を明らかにする
共同の前進にも必要
2 「リベラル」派は安保条約や日米同盟、自衛隊をどうしようとしているか
(1)孫崎享――安保と対米従属を最も強く批判
米軍基地:世界戦略の拠点づくり+日本の無力化
自衛隊:米国の意志で創設
日本が侵略されたからといってアメリカが動くわけではない
冷戦終結後、日米同盟は極東から世界へ変質
集団的自衛権行使:自衛隊を米国の戦争に利用させる仕組み、日本の国益に反する
中国の大国化 アメリカはパートナーを日本から中国に変えた 米中戦争はない
対案
1.アメリカは日本を守らないことを前提に距離を置いて独自の戦略を
日米安保は60年時点、極東中心の運営に戻す
2.日本が繁栄し安全が守られてきた経済重視路線を再評価
アメリカと距離を置くためNATOと協調 EU・ASEANから学ぶ
東アジア共同体構想は望ましい
3.中国との関係では経済が抑止力になっているので、個別に複合的相互依存関係を積む
尖閣領土問題は棚上げ
4.海兵隊は沖縄・日本にいなくてもいい
(2)寺島実郎――日米安保体制の「再設計」
冷戦後の事情変化にあわせて日米同盟の進化
中国脅威論による日米同盟の「深化」とか、米軍基地はアジアの公共財→ばかげた議論
常識に帰れ 外国軍の駐留は不自然 基地なき安保を目指す
→基地の段階的縮小と日米地位協定の改定
(3)柳澤協二――自衛隊の専守防衛への改組
冷戦後、グローバル経済下→米中戦争がない状況
相互依存が強まり戦争という手段が合理性を欠く
→抑止や同盟を意図して減らせる時代になった
集団的自衛権で自衛隊に米軍を守ってほしいという要求はない
日米同盟を相対化しても、アメリカがアジアのルールメーカーであろうとする限り、
日本を見捨てることはアメリカの国益からしてもできない
冷戦時の「報復的抑止力」から「拒否的抑止力」へ =専守防衛
3 安保条約と米軍をそのままに日本の平和は実現するのか?
「リベラル」派への共感点:日米同盟強化の方向は、日本とアジアに平和をもたらさない
疑問点:日米同盟解消を頭から否定していることが、少なからぬ矛盾を生んでいる
(1)アメリカの日本に対する一貫した志向の過小評価
戦争法は安保マフィアの妄想か?
アメリカの世界戦略と日本への圧力を過小評価
集団的自衛権や日米同盟強化の動きを
アメリカのごく一部の勢力の要求と安倍の個人的思い込みと誤認
しかし冷戦後、一貫してどの政権も市場秩序維持のための戦争への加担を求めてきた
1995年 東アジア戦略報告
1996年 日米安保共同宣言、グローバルな協力の確認
1997年 ガイドライン、周辺事態での米軍への後方支援の要請
2001年の9.11テロ以降 アフガニスタン・イラクへの派兵圧力
2005年 日米同盟再編、アメリカのグローバルな軍事行動への加担の要請
2015年 ガイドラインと戦争法、アメリカの戦争への全面的加担体制
冷戦後アメリカの世界戦略と日本の比重
アメリカの世界戦略全体を貫く攻撃性の過小評価
冷戦終結による根本的な情勢転換論
経済グローバル化により戦争がなくなる
→実際には、冷戦後、グローバル経済秩序維持のため戦争は増えている
中国の二面戦略 独特の覇権大国めざして
○一方で、自由市場への中国資本の進出確保のため、自由市場秩序維持すべく、
テロ掃討などで米日などと協力
○他方で、資源確保に必要な戦略的領域では、経済「援助」と軍事的・政治的圧力で
覇権確保を追求
アメリカの二面戦略←中国の二面戦略に対応
○自由市場秩序の維持・管理、テロや独裁政権による市場のかく乱を防ぐために
同じく自由市場維持に利益を見出す中国と連携
○中国が自国勢力の覇権的な囲い込みを行なうことに対しては、武力によっても阻止
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このような二面性をもったアメリカの世界戦略が、冷戦後の対日政策を一貫して規定してきたことに注目しなければならない。冷戦後、アメリカは世界市場秩序の維持と管理のためにも、また中国の覇権的行動を阻止するうえでも、二重の意味で、日本とりわけ沖縄基地の維持に腐心してきたし、市場秩序維持の戦争にも覇権的行動抑止のための作戦行動にも、自衛隊を動員しようとしてきた。
こうしてみれば、冷戦後の米中緊密化のもとで、あるいは中国の弾道ミサイル網の整備の結果、アメリカの世界戦略が変わり海兵隊の沖縄駐留はいらなくなったとか沖縄基地もいらなくなる可能性があるなどと言うような「リベラル」派の言説は、グローバル化が米中の覇権争いを新たな段階に引き上げていることをみない非現実的な見方にほかならない。この議論の最大の問題点は、戦争法を廃止したり沖縄基地の撤去をめざすにはアメリカの世界戦略を批判し、それとの正面切った厳しい闘いが不可避であるという、運動の重要性をあいまいにする点にある。もし「リベラル」派のいうことが正しければ、アメリカは黙っていても早晩日本から撤退することになるが、事態は明らかにそれとは逆の方向に進んでいる。 328ページ
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刑部コメント:冷戦後のグローバル化を捉える情勢論の正確さが平和構想の成否を握る
(2)安保条約のもとで、日米同盟の相対化、非軍事化は可能か?
日米同盟・安保条約の自明視
日米同盟の問題性については指摘しながら、その存在自体は疑わない
→安保や米軍基地を異常と批判しながら、それを抜きにした安全保障を想的できないほど
その異常が常識と化している
安保条約の六〇年段階への「引き戻し」論
難点:全土基地方式と自由な基地使用は60年安保条約が容認している
アメリカは極東条項に縛られることを認めていない
冷戦後の安保の実質的改変を推進してきたのは、日米両政府
60年安保まで戻すには、アメリカと対決することが必要
「日米同盟の相対化」とは何か
安保条約に手をつけない「日米同盟の相対化」は不可能
(3)安保条約をそのままに、沖縄基地の削減・撤去は可能か?
普天間基地撤去問題で「リベラル」派からは、
歴代沖縄県知事が提起してきた地位協定の見直しすら提案されていない
沖縄基地の廃棄を求めるには、安保条約第6条の改廃を前提にして
地位協定の廃止、少なくとも2条の改定が不可欠
(4)安保条約を前提にして、自衛隊を「専守防衛」に引き戻すことはできるのか?
専守防衛論の原型「基盤的防衛力」論――安保と自衛隊のセット論
「専守防衛」論あるいは「拒否的抑止力」論の原型は
1976年「防衛計画の大綱」で規定された「基盤的防衛力」論
→アメリカの強大な「報復的抑止力」を前提に自前の防衛力の「限定」を図る
→安保体制の抑止力が前提の「専守防衛」は相手から見れば、「専守防衛」ではない
安保をそのままに「専守防衛」といえるのか?
鳩山政権の苦闘と挫折の教訓は何か?
「リベラル」派の対抗構想を少しでも実現するには
安保と地位協定に手を付けなければならない
日米同盟容認で沖縄基地問題解決に努力した鳩山政権の失敗がそれを物語る
4 安保のない日本の構想
(1)安保条約・日米同盟は、日本とアジアの平和の確保に役立たない
冷戦期の「戦争しない国」は何によって守られたか
安保肯定派:戦後日本の繁栄は安保条約のおかげ、憲法は役に立っていない
→誤り 憲法と護憲の国民運動が、安保条約を十全の軍事同盟=攻守同盟条約にしなかったことが戦後日本の平和を守った要因
冷戦期に日本の平和を脅かしたもの
米ソの全面戦争やソ連・中国の日本侵略の危険性ではない
米ソの冷戦期の戦争:自陣営内で行なわれた 多くが軍事同盟を口実に
ソ連・中国の侵略の危険性は安保条約があろうがなかろうがなかった
日本が戦争に巻き込まれる可能性→
アメリカの戦争に加担する場合 cf 韓国などはベトナム戦争に加担した
アメリカが起こした戦争の基地になることで在日米軍基地が攻撃される場合
→日本が戦争に巻き込まれなかった理由
安保条約ではアメリカの戦争への加担義務がなかった
憲法・世論を理由に政府がアメリカの要請を断った
☆安保条約があるから平和が守られたのではなく、
安保条約においては軍事同盟としての十全な発動できなかったから平和が守られた
韓国・フィリピンなど他の二国間条約ではベトナム戦争などに巻き込まれた
冷戦後の安保条約・日米同盟
「リベラル」派:経済グローバル化で抑止力は不要に
→誤り、日米同盟存続論とも自己矛盾
アメリカ・中国の覇権主義を日米同盟強化では抑えられない
日米同盟強化では中国の軍事大国化に口実を与える
日本に必要なのは東北アジアにおける平和のイニシアティブ
米中ロを含めた、紛争の武力によらない解決・軍備縮小の機構を確立
(2)安保条約の廃棄によるアジアと日本の平和保障への前進
安保と基地のない日本
安保条約第10条による廃棄
地位協定・付属の特別法がなくなり、沖縄を始め本土も米軍基地撤去が可能に
自衛隊が米軍の補完部隊である状態を改革する梃子になる 「専守防衛力」へ
北東アジア非核、平和保障機構の形成
安保廃棄・米軍基地撤去→憲法の「武力によらない平和」実現の大きな一歩
アジア諸国の信頼を得て、中国の軍事主義の対抗軸に、自主的平和外交展開の力に
中国・北朝鮮の「脅威」は大丈夫か? 安保廃棄の国民的合意のためには
中国の軍事大国化の抑制・北朝鮮の核開発の停止、北東アジアの平和保障機構の実現
米ロを含めた北東アジアの非核と紛争の非軍事的解決を約束する条約の締結と
それを実行する平和保障機構の創設
条約・機構の確認事項
1.紛争の非軍事的解決の原則の確認
2.核の先制不使用原則の承認と、朝鮮半島・日本に対する核不使用保障
3.加盟国間での核運搬設備を含む核装備の削減と査察体制の整備の合意
→米ロ中三国を含むため、2.3.の合意の実現には強力な国際的運動が不可欠
「核兵器禁止条約」の締結など世界レベルの核兵器廃絶運動と連動して
4.通常軍備の軍縮 日本は憲法上の制約から、軍縮のイニシアが取れる
5 自衛隊をどうするか?
憲法の平和主義に基づく「自衛隊の解散と非軍事組織の新たな編成」
(1)自衛隊の縮小・解散の二つの段階
安保条約の廃棄を前提に国民的合意を得ながら二段階で行なう
(2)自衛隊の縮小・解散の第一段階――自衛隊の対米従属性打破、真の「専守防衛」へ
第一段階の改革では、自衛隊を真に「専守防衛力」「自衛のための必要最小限度の実力」に
自衛隊の対米従属性、米軍の補完部隊としての性格の打破
米軍基地の撤去だけでなく、基地の共同使用・日米共同作戦体制の破棄
米軍との兵器・作戦の緊密な連携や相互運用を切り離す
戦争法と15年ガイドラインの廃止→自衛隊の編成自主化の第一歩
真に「専守防衛」にするための自衛隊の装備、編成の改変
日米共同作戦体制づくり=「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」を破棄
「平和構築戦略」「平和計画の大綱」を策定
→平和のイニシアティブ、専守防衛原則を打ち出す 適合するように関係法令を改正
アメリカ補完となるような装備の廃棄、正面装備の削減、組織・編成の改革
基地・駐屯施設の縮小・廃止
災害派遣をはじめ、憲法の平和主義から評価される活動、装備の充実
(3)自衛隊の縮小・解散の第二段階
第二段階では、自衛隊を解散し、平和主義に合致した機能は、諸官庁・民間に分散する
第一段階から第二段階への移行はかなり長い過程と経験を積む必要がある
第二段階に入る条件
(a)北東アジアだけでなく、アジア・世界レベルでの軍縮と平和保障の前進
(b)軍隊の廃止、9条の実現についての国民の確固たる支持
(c)新たな福祉国家型の政治の前進
新自由主義改革の停止 社会保障・地域産業の再建
グローバル企業への国際的規制、世界的格差是正、テロ・紛争の減少
自衛隊解散の大まかな輪郭
@国土防衛的機能:国境警備の警察的活動として海上保安庁と統合して国土交通省へ移管
A災害復旧的業務:他の諸組織と統合し国際災害救助隊・国内緊急災害救援隊として再編
6 多国籍企業の規制による経済構造の改革と市場規制
(1)平和国家と福祉国家の連結
平和国家と多国籍企業経済の規制、改革の必要性
冷戦後の戦争と紛争の根源
@多国籍企業の野放図な展開
Aそれを保障するためのグローバル競争大国によるルール作り、自由市場秩序の維持・拡大のための戦争・軍事力行使
Bそれにより地域や国家の統合を破壊された諸勢力の反発・武力行使
Cその破壊を容認してきた地域の独裁政権に対する民衆の蜂起
Dそれに対する大国の介入、大国同士の対立
→刑部コメント:日ごろ目にするニュースでの戦争・紛争をこのような原因分析の観点
から見ることが重要
狭義の平和保障の政策だけでは不十分
日本が平和国家の道を歩むうえでの不可欠の条件
1.アメリカとの対決だけでなく、
進出先を破壊する日本の多国籍企業の自由な進出への規制が必要
2.多国籍企業の規制による各国国民経済の再建
3.多国籍企業本位の政治を規制 新自由主義改革を停止
経済改革は安保のない日本をつくる平和構想の不可分の一環
平和国家と新たな福祉国家
旧い福祉国家は「戦争国家」:戦前・戦後の帝国主義の展開と不可分
現代の多国籍企業 一方で企業活動のため戦争を支持
他方で競争力を弱める福祉国家を攻撃して新自由主義政策支持
∴新たな福祉国家は平和国家を目指す
先駆的試みとしての都留重人の経済構造改革論
安保廃棄に伴う直接の経済的影響の検討にとどまらず
軍事支出を求める現代の資本主義経済の構造そのものの改革の必要性を主張
現代経済の構造を変えないと安保体制の最終的な克服はできない
→独占体の規制による福祉国家型経済への転換
(2)新たな福祉国家による新自由主義改革の停止と多国籍企業規制
新自由主義改革の停止と福祉国家の建設
他国を侵害しない相対的に自立した国民経済の再建
基地経済の克服を目指す沖縄
→軍事大国化を阻止し、国民経済再建と福祉国家を目指す運動の焦点
多国籍企業の活動規制と自由市場ルールの見直し
多国籍企業の進出先の活動に対して
環境・労働条件・国民経済への影響の見地から規制 一国では困難
→新自由主義的改革と多国籍企業に対する「社会運動の高度な連帯」「福祉国家連合」
刑部コメント:米日のグローバル資本の支配が諸矛盾の原因であり、そこに平和への様々な脅威が生まれることを強調したのは他の議論にない本テキストの優位性。ただし、そうしたグローバル資本の世界支配から来る問題と関連がありつつも、中国・ロシアなどの覇権主義は、独自の問題を含むからそれを解明することも課題としてある。
7 安保廃棄へ至る道
安保廃棄・米軍基地撤去にアメリカの反発は必至 国民的団結を要する長い大事業
戦争法廃止の連合政府から安保廃棄の連合政府へ
(1)戦争法廃止の連合政府
第一の課題:戦争法の廃止と共同作戦体制をもとにもどすこと
第二の課題:辺野古新基地建設の中止と普天間問題解決
第三の課題:憲法擁護の原則を打ち出し、日本外交の原則として
憲法9条の堅持とそれを日本外交の方針とすること
国民的事業となる戦争法廃止 …… 第一の課題
戦争法反対の共同→戦争法廃止と立憲主義を取り戻す共同に発展
戦争法を廃止して日米同盟と自衛隊を以前の状態に戻すだけでも
連合政府の樹立は必要不可欠
戦争法廃止とは、90年代以降、アメリカ主導で行なわれてきた日米同盟強化の流れを
逆転させる難事業
従来:周辺事態法・テロ対策特措法・イラク特措法→自衛隊の海外派兵体制の進展
戦争法廃止はこの流れを初めて止めることになる
戦争法廃止は15年ガイドライン(自衛隊の米軍への全面的加担体制)の事実上の破棄
→アメリカ、外務省、防衛省による阻止は必至
強力な政府でなければ、これらの抵抗を押し切って戦争法廃止に進めない
連合政府を実現するうえでの課題
戦争法廃止後の安全保障について共同の中での一致がない
連合政権作りの合意案
@自衛隊の海外での戦争加担・武力行使はしない
周辺事態法による現状は拡大しない、国連PKOは現状維持、海外貢献は非軍事分野
A安倍改憲反対 9条改憲・緊急事態条項創設反対
B紛争を武力で解決しない、武力によらない紛争解決ルールづくりのイニシア発揮
紛争を軍事化させるような自衛隊の軍事能力・権限拡大はしない
C辺野古新基地建設撤回、普天間基地撤去 日米地位協定見直し
D共同の場では、共産党は周辺事態法・有事法制の見直し、安保条約の廃棄・再検討、自衛隊の縮小・解散は求めない 民進党は領域警備法制定、周辺事態法やPKO協力法の改正は求めない
辺野古と沖縄基地解決へ向けて――日米地位協定の改定 …… 第二の課題
普天間基地の辺野古移転という合意の見直しを求めて日米協議を要求
アメリカ政府は応じないだろう→地位協定の根本的見直しを提起する
安保条約と地位協定における全土基地方式
安保条約6条、地位協定2条 … 365・366ページ
地位協定2条の改定による基地返還要求の明記
1995年 沖縄県大田知事の「要請」 地位協定の2条の改正案
…地方自治体の意見聴取により基地が「振興開発等に悪影響を及ぼす」と認めた場合、日本政府は返還を求め、米国は応じる義務がある
2000年 同県稲嶺知事時代の要望
…「住民生活の安全確保及び福祉の向上のため」県からの要望に対して
日米両政府が検討し意向の尊重を行なう
⇒連合政府の地位協定改定案
…「当該自治体の住民生活の安全確保あるいは生活に重大な悪影響を及ぼしている場合」という基準の下で、日本政府が基地返還請求できるようにする
他にも、環境・刑事手続き・米軍人軍属等による犯罪被害補償等々について
地位協定を改定すべき
憲法堅持と九条外交 …… 第三の課題
安保条約の廃棄の成否は、9条に基づく外交により北東アジアの平和を
現実的に構築できるかどうかにかかっている
[1]侵略戦争の責任と謝罪
[2]北東アジアにおける軍事的緊張の緩和と非核・平和保障機構づくり
1.あらためて非核3原則を宣明 アメリカに対して第3原則の実行の確約を求める
武器輸出3原則の復活
2.北朝鮮への威嚇政策を再検討し、拉致問題の解決と日朝平壌宣言の履行を改めて宣言
3.中国に対しては、歴史問題の原則を宣言 中国の覇権主義を是正し、緊張緩和を促進する措置を強力に推進する 六ヵ国協議・二国間協議で 紛争の非軍事的解決、領土紛争の北東アジアレベルの機構による解決方式
4.六ヵ国協議の再開 北東アジアの非核と紛争解決の機構に強化 日本は唯一の被爆国・9条をもつ国としてイニシア発揮 朝鮮半島と日本を非核武装地帯として北朝鮮に核開発放棄を認めさせる
5.核の先制不使用協定、核軍備の削減、査察の協定締結のイニシア 核兵器禁止条約の取り組みと連携
6.紛争の軍事的解決の禁止を協定化 ASEN の「行動規範」参考に北東アジアでも
[3]国連外交
核廃絶、ASEANとの連携、WTOの改革:国民経済再建の余裕与えるように
(2)安保廃棄への国民的合意づくりと安保廃棄の連合政府
安保廃棄の国民的合意
安保条約をめぐる国民意識
安保支持:8割超
自衛隊があるから戦争に巻き込まれない、という意見は安保・憲法に比べて非常に少ない
国民の多くは、安保条約による米軍の存在と憲法のもとでの自衛隊の海外での戦争禁止によって日本の平和が守られてきたと考えている
安保に対する期待と依存の高まり←日本をめぐる「脅威」の増大
実際には安保は平和を支えたのでなく、アメリカの戦争への加担を強めた
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こうした国民意識を変えるには、 …中略… 戦争法廃止の連合政府が、その外交により、アジアにおける平和保障の体制を構築することにより、国民が、武力によらない平和保障の有効性についての確信を強める以外にない。戦後自民党政権のもとでは、政府は、アジアと世界の平和のために独自のイニシアティブを発揮したことは一度もなかった。それが、国民のなかでの安保依存意識を維持した大きな要因となったと思われる。
374ページ
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アジアレベルの平和秩序の推進と自衛隊の縮小・解散
安保条約廃棄による基地撤去とアジアレベルの平和保障体制の強化の中ではじめて
自衛隊の縮小・解散の合意を獲得できる
自衛隊容認意識:9割超
1.自衛隊に対する好感は増強や軍事大国化の意識ではない
しかし近年増強論が増加傾向→中国脅威論と並行
2.災害派遣での活躍による支持
8 戦争法廃止から安保のない日本へ
軍事的対決の激化する現代において、アジアと日本の平和を実現するには
憲法の「武力によらない平和」理念を実現する他ない
憲法の構想を世界的秩序として具体化する努力によってのみ可能
理想主義的に見えるがそうではない
日本国民の実績
9条を守ってきた
非戦の思想は不十分ながら海外で武力行使しないという原則として維持
戦争法反対運動の高揚 安保のない日本への道を切り開くべき
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<付記> 非武装平和主義について
刑部泰伸(2018年5月30日・記)
安倍改憲阻止が当面の緊急課題です。安倍改憲においては、何と言っても9条に自衛隊を加憲することが本丸です。問題の焦点は自衛隊が違憲か合憲かではなく、米軍と共に海外で戦闘ができる状況を許すかどうかにあります。安倍首相は自衛隊違憲論をなくすための改憲で、現状と何も変わらないから心配無用だと言いますが、それがいつもの嘘であることは明白です。この論点については多くの解明がありますからここでは触れません。
新聞の投書などで9条改憲についていろいろと議論されています。そうすると必ずしも上記の様に問題を整理して、当面する課題に集中するわけではありません。どうしても9条と自衛隊のそもそもの関係から安全保障政策まで広い話題で議論が繰り広げられます。それはどうしてもそうならざるを得ません。憲法と安保=自衛隊との矛盾を基軸に、戦後日本の歩みから今日の平和をめぐる複雑な状況の総体が私たちの眼前にあり、9条改憲は将棋に例えるならばその焦点に打ち込まれた駒だからです(飛車だろうな。暴れさせたらとんでもない破壊力。逆に打ち取ってしまえば恒久的勝利につながっていくだろう)。したがって、一方では議論を当面の課題に引き寄せる努力をするとともに、この際それだけでなく、錯綜する議論の中でそれぞれについて原則的な見地を明らかにすることも同時追求することが先々をにらんで大切です。「武力によらない平和」という考え方を基礎に置くことは、どのような情勢・歴史段階においても威力を発揮するものですから。
以下では、改憲の対象である9条の非武装平和主義について考える際に必要だと思う基本的視点を簡単に提示します。自衛隊違憲=解消論に対しては、非現実的で無責任だという非難が必ずあります。そこには自衛隊合憲論から同違憲=改憲論までいろいろありますが、それはここでは問いません。そうした非難に対して、同違憲=解消論の立場の一部に、あえて挑発的にか悟ってか、丸腰でいる覚悟が大切だ、と応じる向きがあります。そういう言い方について私は究極的には否定はしませんが、少なくとも論戦上は現実的な対応ではなく、政治的に勝つ気がない(ようにさえ思われる)という意味では無責任な言説だと思っています。それでは多くの人々の共感を得られません。
第一に強調したいのは、今日から将来に向けての段階的見方です。日本は非武装で行くと言われたら、多くの人々はすぐさま北朝鮮や中国などの状況を思い描いて、とてもそんなことはできない、と結論づけるでしょう。それは無理もない。ここには大きな誤解があります。そういう誤解を招くような言い方をしてはいけません。9条を完全に実現すべく非武装化するのは、今日の情勢下ではなく、何段階もの措置で情勢を変えた末のことです。
今日でいえばまず戦争法を廃止しなければなりません。6ヵ国協議を活性化させて朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の終結を実現し、6ヵ国の信頼醸成が進むことが戦争法廃止の努力と並行するでしょう。そうした平和環境の進展の先に日米安保条約の廃棄が現実的課題となってきます。ここでは米国との対峙を平和的に乗り切る国民的団結が試されます。仮想敵国をなくし軍事同盟から脱却することで真の平和外交の基盤が確立されます。
それらを前提に、今日の自衛隊のもっている対米従属性と支配層に奉仕する国家の暴力機構としての性格を徐々になくしていくことが必要です。国内外に向けたそうした武装機構から災害救助隊としての性格に移行していくことが現実的改革の道かもしれません。
そうした何段階もの過程を経て、もはや武器は無用の長物だという理解が進む中で9条の非武装平和主義が実現されていきます。もちろんこれは日本だけでなく世界全体の平和への努力とともにあります。2017年に国連で核兵器禁止条約が採択されたことはその重要な一環です。
この段階的アプローチで重要なのは、それが単なる現実主義だから段階的になっているということではなく、「武力によらない平和」という理想を一貫して掲げ追求することが段階を一歩一歩上がる推進力になっていることです。
そうした理想追求的な政策イニシアの例として、最近の北朝鮮情勢をめぐる韓国の文在寅政権の姿勢を挙げることができます。日本の安倍政権のような対話拒否=圧力一辺倒路線とは対照的に、「戦争を絶対に起こさせない」という決意の下、まず南北朝鮮対話を実現し、米朝首脳会談実現に最大限の努力を払いました。昨年の米朝一触即発の危ない情勢を想起するなら、ここまで現実を変革した政治実践に深い感銘を受けます。日本の政権・支配層のみならずメディアでは軍事力信仰が支配的であり、政治対話への想像力・構想力を欠き、朝鮮半島蔑視も根強く(それは少なくとも韓国に対しては無根拠であり、北朝鮮との共存共栄の可能性を断っている)、それらと不可分の情勢の見方としてのニヒリズム・シニシズムが蔓延していました。その間違いは今では明白ですが、おそらく本質的な反省は行なわれていないでしょう。その状況を克服することが私たちの課題です。今回の文在寅政権の努力方向に学びながら、「武力によらない平和」という憲法の理想を高く掲げつつ、現実的な一歩一歩の長い歩みを追求するその先に非武装平和主義が実現されるでしょう。
もう一つ重要な視点があります。一面的な被害者意識的脅威論を克服することです。善良な日本の付近に、中国・北朝鮮・ロシアなどの邪悪な国があり、それが脅威になっているのでアメリカが守ってくれている、と考えているのが多くの日本人の安全保障環境観ではないでしょうか。これでは他国から笑われます。もちろんこの近隣三国はそれぞれに覇権主義とか独裁権力とか問題が多く、日本にとっての脅威があることは事実です。しかし彼らから見れば日本も脅威なのです。
まず日本はかつての侵略戦争をきちんと反省していないと警戒されています。確かに公式にはいわゆる村山談話などにおいて日本政府は侵略戦争の反省を表明していますが、それはタテマエであって、ホンネではないと見られています。よく日本人はうんざりした顔で、何度謝ればいいのか、と言います。しかしアジア諸国にすれば、何度も謝る必要はないが、政府の公式見解に反して侵略戦争を美化する多くの政治家の妄言がある限り信用できないのです。当然です。妄言政治家とは違って日本世論の多数は侵略戦争を認めていますが、彼らを選挙で落とすくらいでないといけません。アジアにおいて、日本がかつての侵略戦争の反省をしっかりしていると認められることが、今日の日本の信用を確立し、周辺諸国の要らぬ警戒を解いて、自国の平和を守ることにつながります。
次にアメリカの見方です。日本人の多くは、アメリカは自由と民主主義の良い国で日本の友好国であり軍事的にも守ってくれていると思っています。しかしアメリカはいつも戦争をしている好戦的な国家で、第二次大戦後もベトナムやイラクなどへの侵略戦争を数多く敢行してきたまぎれもない帝国主義国家です。確かに北朝鮮は邪悪な独裁国家であり、暴虐な国際事件をたびたび起こしていますが、朝鮮戦争以降、侵略戦争をしたことはありません。そういう意味ではアメリカの方がはるかにならず者国家なのです。
日本はそのアメリカと軍事同盟を結び従属国となっているのですから、仮想敵国とみられている中国・北朝鮮・ロシアにとって日本は軍事的脅威です。北朝鮮が日本を攻撃するならば、その理由は在日米軍基地があるからです。
一面的な被害者意識的脅威論があるために、日米軍事同盟で守ってもらおうとか、自衛隊を増強して守りを固めようという発想になります。客観的に安全保障環境を見るならば、周辺国からの脅威は確かにあるけれども、日本と日米軍事同盟による脅威もあり、これを相互になくしていく信頼醸成の努力こそが必要なのだと分かります。武力ではなく対話なのです。経済・文化交流を進めることがその土台をつくります。日本外交がその道を進むならば、「武力によらない平和」という憲法の理念はさらに輝きを増し、国際的信用を獲得するシンボルとなって、日本の平和環境を揺るぎないものにしていくでしょう。
以上のように、――(1)非武装平和主義の段階的アプローチ、(2)一面的な被害者意識的脅威論を克服して客観的に国際情勢を見ること―― この2点が、憲法と平和をめぐる議論において不可欠の視点であろうと思います。これを比喩的に表現すると……
(1)裸で狼の群れの中に飛び込むのではなく、周りを羊のように変えて仲良くなる中で鎧を脱いでいく。
(2)自分だけが羊で周りが狼だと思うのは大間違い。自分も狼。周りと一緒に羊のようになっていく努力が必要。ただし比喩をより正確化すると…日本は1945年までは狼。1951年以降は虎の威を借る狐。45年から51年の間は羊になる可能性があったが道を誤った(サンフランシスコ単独講和と日米安保条約締結)。
初めに述べたように情勢の焦点は安倍改憲です。そこに議論を集中し、効率よく反対世論を形成することが必要です。ただし改憲が問題となると、どうしても憲法そのものと平和・安全保障について様々に論及することになってしまいます。
日本の平和を考えるときに、憲法と安保条約=自衛隊との矛盾は常に問題の核心であり、それを外しては意味の薄い抽象論に終わります。矛盾する両者が格闘しながら共存し、世論の多数派は矛盾した共存をそのまま受容しています。そこには果てしなく問題があり、それをどう捉えるかが難しくも変革のキーでもあります。そうした中で、非武装平和主義は憲法から現実に投げられた鋭い「問い」であり、それに正面から対峙することを通じて、平和の本質とその実現への構想を考え続けることはいかなる情勢・歴史段階においても有意義であると思います。とりあえずそこで必要ではないかと思われる二つの視点を以上のように提起しました。
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平和構想学習会 第6回 参考記事用付属レジュメ
於:くらし支える相談センター 2018年6月18日
ASEAN(東南アジア諸国連合) 50年余の実績に学ぶ(1967年8月8日設立)
軍事同盟によらず、紛争を平和的・自主的に解決し繁栄した地域を
…全体として主に(参考記事☆4)による
◎加入国・規模など
5か国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポール)で発足
その後、10カ国に(ブルネイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー加入)
人口:約6億3千万人 cf EU:約5億人(イギリス含む)
2015年 「ASEAN共同体」に発展
◎東アジア(東南アジアと東北アジア)の長く続く平和
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)発行の年鑑
世界各地の戦闘死者数の分析
1946〜79年 東アジアが80% ←朝鮮戦争、インドシナ戦争、中越戦争(79年終了)
1989年以降 東アジアは3.6%(人口は約30%)
東アジアの平和の要因 いくつかあるが
e.g. 日本国憲法9条
ASEAN:大国の紛争介入を防ぎ外交解決を目指す機構
◎ASEANの平和構築の仕組み
*ASEAN設立宣言 1967年 cf ベトナム戦争 1960〜75年…(参考記事☆3)
外部の干渉から国と国民を守る すべて外国の基地は、暫定的
軍事同盟にならない 当時、東南アジア条約機構(SEATO・軍事同盟)あり
*東南アジア友好協力条約(TAC) 1976年発効
各国の独立・主権・平等・領土保全などを尊重
「紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇、または武力の行使の放棄」
諸外国にも批准広がる
*ASEAN地域フォーラム(ARF) 1994年発足
地域の安全保障をめぐる対話の機構 アメリカ、中国、日本、韓国など26か国+EU
国連以外に北朝鮮が参加している唯一の対話の場 …(参考記事☆5)
*東南アジア非核地帯条約 1997年発効
ASEAN諸国の領域・大陸棚・排他的経済水域において、核兵器の製造・保有・
管理・輸送・実験・使用などを禁止
域外核保有国にも批准求めるが実現していない
*東アジアサミット(EAS)とバリ原則宣言 2011年
米・中・ロ・日・韓・豪など周辺諸国首脳も参加する東アジアサミットとして、
東アジア全体でTACと同様の原則を尊重することを宣言
◎ASEAN 三つの貢献
1.武力使わない
1960〜70年代 東南アジア地域は混沌として、武力紛争や不信感
ASEANの50年が諸国間の力学をゆっくり、根本的に変えた
紛争・課題あっても、東南アジアは全体として平和の文化の中で暮らす
2.脱「大国支配」
東南アジアはかつて大国の駒にされ分断されたが
ASEANによって地域のルールは自分たちで決めるようになった
3.経済を豊かに
50年前は貧困が蔓延していたが、今では世界的な経済発展の主要な原動力の一つ
◎ASEANの取り組みと課題
南シナ海問題 : 南シナ海行動規範(COC)の枠組み合意目指す
加盟国の亀裂乗り越える努力
北朝鮮問題 : 米国・北朝鮮と関係持つ立場から外交努力…(参考記事☆5)
→2017年8月 ARF開催 北朝鮮の軍事挑発を批判し対話呼びかけ
核兵器禁止条約 : 採択の推進力
**域外の周辺諸国とも定期会合もち、東アジア全体に影響力
この平和の機構が東北アジアにも広がれば「東アジアの平和」はさらに長く続く
<課題> …(参考記事☆1)に詳しい
・これまで築いた制度・規範・多国間枠組みをより実効あるように進化させる
・東アジアサミット(EAS)のプロセスで不測の事態を管理するメカニズムを設立
→国家間の信頼関係を前進
・域外に平和のエリアを拡大 e.g. インド太平洋平和・友好条約構想
・EASのバリ原則を条約に→非ASEAN諸国も武力不行使を宣誓
「日本・中国・インドなどがわれわれは平和的手段で問題を解決できる、
と声明することを想像してみてください」(マルティ・ナタレガワ)
◎ 番外 米軍基地撤去25年 フィリピンの今 …(参考記事☆6)
1992年11月24日まで アジア最大の米海軍スービック基地あり
米軍の「殺気」感じ、女性への暴行が絶えない日常 今とは別世界
1991年 旧基地条約の期限切れ
→米比両政府が調印した新しい基地存続条約を上院が否決→92年11月、基地撤去
*上院での議論
基地存続反対議員の主張
米軍基地は憲法で示された国家主権・自立外交・非核・人権を侵害→米国への従属
基地存続賛成議員の主張
撤去で基地雇用が消える 米国の怒りを買い、投資・輸出が激減→経済崩壊の危険性
外国からの侵略・支配を招く
*撤去の結果
経済:基地雇用、3万5千人消失 ⇔ 跡地民間転用で12万6千人雇用(2017年)
安全保障:米国との軍事同盟に頼らない自立外交の強い推進力になった
「巨大な治外法権的な米軍基地があれば結局、米国に従う国とみられる。米国の敵から敵視され、攻撃を招く根拠にもなる。国のあらゆる政策にいわば米軍基地の『色』がつく。ASEANに加盟していても、やはり他国とは違った目でみられます」 …オルランド・メルカド(1991〜2001年、エストラーダ政権で国防相。米比相互防衛条約に賛成の立場)
「25年前の米軍基地撤去で、南シナ海に中国が進出し紛争が激化したという声がありますが、それも違う。そもそも米軍基地はフィリピンの領土を守るためにあったわけではありません。基地があってもフィリピンとマレーシアが領土紛争で武力衝突したとき米軍は動かなかった。/他方、基地撤去後もフィリピンと米国には相互防衛条約があり、共同訓練もやっています。それでも紛争は激化した。/中国の変化がその主要因です。中国にどう対応するかが大事です。軍事同盟で対抗すればますます緊張と対立は高まる。/フィリピンの現政権は自立外交で中国との外交交渉を強め、ASEANを通じた紛争の平和的解決をめざし、その成果も出ています」 …ウイグベルト・タニャダ(元上院議員、相互防衛条約に基づく訪問米軍地位協定や米比防衛協力強化協定に反対の立場)
→日本と違って、アジア諸国には対米従属でない保守勢力が存在する
(参考記事) 「しんぶん赤旗」より
☆1 「ASEAN50年 平和共同体の展望 インタビュー・シリーズ」
マルティ・ナタレガワ(インドネシア前外相) 日刊紙2017年7月22日付
☆2 「同シリーズ」 オルランド・メルカド(フィリピン元国防相)同7月27日付
☆3 「同シリーズ」 ブー・コアン(ベトナム元副首相) 同7月31日付
☆4 「ASEAN 平和を築く」 日曜版2017年7月23日付
☆5 「ASEAN 交渉でこそ戦争回避」 同2017年8月20日付
☆6 「米軍基地撤去25年 フィリピンの今」 同2018年1月14日付
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雑記・歴史を動かすのは民衆の力
トランプ米大統領にノーベル平和賞を、という声もありますが、北朝鮮との対話はいいとしても、中東の問題や温暖化対策などを考えれば論外です。むしろ文在寅・韓国大統領の方がふさわしい、と思っていたところ(佐藤栄作が受賞したノーベル賞なんてどうでもいい、という揶揄もあるが)、本村伸子衆院議員(共産党)は「史上初の米朝首脳会談で朝鮮半島の非核化と平和体制構築へのプロセスのはじまりに、私は、韓国の市民の皆さんの動きが大きく貢献したと考えています」(「しんぶん赤旗」2018年6月15日付)と語っています。卓見です。本村氏は、前政権を倒した「キャンドル革命」の何回もの大集会を振り返り、「韓国の市民のみなさんの活動に日本の私たちがしっかりと学ばなければならないと痛感しています。憲法9条の方向へ世界が動きはじめました。憲法9条で希望をつくるときです」と結んでいます。まさに安倍政権打倒が日本とアジアの平和の必要条件です。
「戦争の危機を回避し、平和への道に踏み出した朝鮮半島。この立役者となった文政権を誕生させ、支えているのは、韓国国民の平和を願う熱い思いです」(同前6月17日付)。文大統領は「朝鮮半島問題の直接当事者は私たちだ。私たちの運命は私たちが決めるという主人としての意識を持って能動的で主導的な努力を続ける」(同前)と強調しています。当たり前のことなのですが、対米従属意識が骨までしみついた私たち日本人の目には実にまぶしく映ります。
トランプの言動にはすべて賛成、さらに国政の私物化や嘘が当たり前という異常な政権にウンザリしながらも慣れてしまいそうな空気は何でしょうか。平和を願い、豊かな生活と人間らしい労働を求めるのは誰でも同じ。それを率直に引き出せる道を見つけることで、日本版の「キャンドル革命」を実現したいものです。